なぜモラハラをされても、暴言を吐かれても、DVをされても、精神的に虐待されても被害者は加害者から逃げられないのか。
実は、これにはたった一つの理由があります。今から『ナルシストから離れられない理由』についてお伝えしていきたいと思います。
トラウマボンディングとは
ナルシストに暴力を受けてもモラハラや酷いことをされても、被害者が加害者から離れられなくなる理由は『トラウマボンディング』というものが起こっているからなんです。
トラウマボンディングという言葉を初めて聞いたという方が多いかと思いますが、トラウマボンディングとは身体的虐待・精神的虐待が起きている関係で被害者が加害者に愛着を抱き、離れられなくなる心理状態のことを言うんですね。
トラウマボンディングは心理学の用語で、トラウマティック・ボンディング、またはトラウマの絆や心的外傷性絆とも呼ばれています。
実は、以前に動画でお話しした人質が犯人に親近感や好意を抱いてしまう現象である『ストックホルム症候群』と少し似ているのですが、ほぼ意味は同じです。
要するに、トラウマボンディングは被害者が虐待をする加害者に対して恐怖や後悔を感じる反面、加害者の優しさによってその関係内で強い絆が形成されて、それを愛情だと勘違いしてしまうことを指すんですね。
トラウマボンディングが起きている時被害者は虐待され傷ついても、加害者に対して『彼/彼女にも辛い過去があったはず』『きっとこの優しい一面が本当の姿なんだ』と同情したり、自分が受けている虐待を正当化するための言い訳を探すことがあります。
トラウマボンディングが起こる3つの理由
①愛着問題
どうしてナルシストとの関係でトラウマボンディングが起きるのかというと、大まかな理由は3つあります。
1つめは被害者が抱える愛着問題で、加害者に傷つけられたとしてもなぐさめてもらうために加害者を頼ってしまうんですね。
②依存
トラウマボンディングが起きる2つめの理由は、依存です。ナルシストは理想化と脱価値化を繰り返して、被害者にモラハラや精神的虐待を行います。
この理想化と脱価値化は簡単にいうと、愛と鞭のようなもので、ナルシストは被害者にラブボミングという心理的操作のテクニックを使って愛情表現をします。
この時、被害者にプレゼントや花束を渡したり、将来の約束をしたり、被害者が自分から離れていかないように一生懸命自分をアピールするわけです。
でも段々と関係を続けていく上で、自己陶酔というものが不足してきますから、モラハラなどをして自己陶酔的な供給を行い、内側にある空っぽのタンクを満たすんですね。
これが脱価値化で、今までの理想化の時とは全く違う態度で接します。
被害者の欠点を探してとことん貶めたり心理的にコントロールして、相手を精神的に痛めつけることで彼ら自身の低い自尊心を高めます。
ただ加害者の嫌がらせ行為に嫌気がさし、被害者が逃げようとするとフーバリングというものを行なって、再びターゲットである被害者との関係を修復しようとするわけなんですね。
ラブボミングなど様々な戦術を使って被害者を取り戻そうとする加害者に、被害者が『自分が間違っていたのかも』『私にも至らない所があったんだ』『ただ彼/彼女の虫の居所が悪かっただけなんだ』と思い込ませて、今までの加害者による虐待行為を記憶から消して、無かったことにしようとするわけです。
③虐待のサイクル
トラウマボンディングが起きる3つめの理由は、ナルシストとの関係では4段階における虐待のサイクルが存在するからです。
ナルシストの虐待サイクル
①ラブボミング/Love bombing
②脱価値化/Devaluing
③廃棄と別れ/Discarding
④フーバリング/Hoovering
今お話ししたように、ラブボミングで相手を理想化し、脱価値化で本格的にモラハラを開始する。
廃棄と別れのステージでは冷たい態度で接する、ターゲットを変更し浮気を繰り返すなどしたにもかかわらず、愛想をつかし離れていったターゲットに謝罪し、フライングモンキーなど取り巻きを巻き込んで、もう一度関係を繋げようとするフーバリング。
ナルシストと関わるとこの4段階の虐待サイクルの罠にハマってしまうことが多く、巻き込まれると非常に厄介な状態なんですよね。
愛着の問題、依存、虐待のサイクル
大きく分けてこの3つが原因で、被害者はトラウマボンディングの問題に悩まされてしまうわけです。
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トラウマボンディングのサイン
①その関係から抜け出せないように感じる
虐待をされても離れられない被害者は『彼/彼女を分かってあげれるのは私だけ』『彼/彼女は仕事や育児で疲れているだけ』『周囲は私たちの関係に嫉妬しているんだ』なんて考えてしまうこともあるんです。
被害者が過去に虐待やネグレクトを受けたことで愛着障害を抱えていたり、自尊心が低いと『孤独は嫌だ。一人になりたくない。人に自分を認めてもらいたい』と感じ、『彼/彼女しかいない』と思い込むようになります。
トラウマボンディングを抱える被害者は加害者に酷く扱われたとしても、相手の良い部分を探して助けようとしてくれている人を突き放さそうとしたり、味方してくれる人から遠ざけて距離を置こうとすることもあります。
たとえその関係がお互いを傷つけ良くないものだと理解していたとしても、情が湧いたりどこかで同情心や愛情を感じて『離れたくない』という考えにどうしても固執してしまうのです。
②常に加害者の機嫌を伺う
ナルシストに狙われやすい被害者は、加害者の表情や仕草から相手の感情や機嫌を読み取ろうとしたり、相手にどう思われるか他人の顔色を気にしてしまう敏感なタイプが多いです。
体質的に繊細だったり、人より共感力が高く相手の気持ちを察しすぎやすいんですね。
③逃げるのが怖いと感じる
トラウマボンディングの被害者は、『逃げたらなんかされそう』『距離を置いたら何されるか分からない』という恐怖に駆られていることが多いです。
夫婦の場合、加害者が子供を使って被害者を心理的にコントロールしていることから、被害者には『逃げ出す』という選択肢にすら辿り着けないケースも多いです。
経験した人にしか分からない心境かもしれませんが、被害を受けた側からすると、逃げないのではなく逃げられないんですよね。
悪性ナルシストの場合は、虐待的で別れを切り出すとストーカーになったり、暴力や脅しなど力でコントロールするという『何をしでかすか分からない人たち』です。
私も同性の悪性ナルシストに標的にされた時は、何かと理由をつけて家に来たり、第三者を使って連絡を取ろうとするなど、悪性ナルシストは非常に執念深いと感じたのが率直な感想です。
またナルシストは人やその状況に合わせて、態度や振る舞いを変えることが可能です。
虐待的な悪性ナルシストでも、ナルシシズムを隠し一時的にカバートに姿を変えたり、尊大型ナルシストに変わり横柄に振る舞うこともあります。
暴力やモラハラを受けている被害者の立場からすると、勇気を出してその環境から逃げるよりも、今いる状況に耐えている方が実は楽だったりするんですよね。
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④周囲に距離を置くことを勧められる
被害者は家族や友達など周りにいる人たちに『そんな人別れたらいいのに』『どうして離婚しないの?』『絶対に距離置いた方がいいよ!』と勧められたり、説得されることが多いです。
でも現実はそうはいかず、『別れるくらいならモラハラに耐えた方がまだましだ』と、別れた方がいいのに別れられないわけです。
周囲は『そんなにまで嫌な思いしているなら、どうして別れないのだろう』と疑問に思うかもしれません。
・逃げたら執着されるかもしれない
・昔からお世話になっていた人だから
・別れたら子供に会えないかもしれない
・離婚後の生活が不安
など様々な理由が考えられますが、トラウマボンディングは加害者との感情的な愛着が原因で、その関係を終わらせることを恐れさせ、トラウマの絆という加害者と被害者の繋がりをもっと複雑化し、被害者をコントロールし続けるものだということが言えます。
⑤距離を置くことに強い罪悪感を感じる
今までナルシストがしてくれたこと、自分自身に与えてくれた愛情やこれまで作ってきた思い出などを振り返り、『でも彼/彼女は虐待していたけど、愛情も与えてくれた』『離れるのは自分の我が儘かもしれない』『ずっとモラハラをされたわけではない』『酷い暴言は吐くけど、暴力を振われたことはない』『出会った頃は優しかった。私に足りない所があるからだ』と距離を置くことに言い訳を探してしまうのは、トラウマボンディングを受けている被害者の代表的な特徴のうちの一つと考えられます。
虐待は暴力だけとは限りません。
彼/彼女の幼少期のトラウマが原因でモラハラやDVに発展している可能性は高いですが、それは決して皆さんを虐待してもいい言い訳にはなりません。
ただ被害者はナルシストの心理的操作によって、彼らの言動を正当化することが習慣化されていきます。
例えば、『私がなんとかしてあげなきゃ』『私が言い返さなかったらいいんだ』『自分が変われば相手も変わってくれるはず』
こんな風に被害者が相手を変える努力をしようとすることも、トラウマボンディングのサインなんです。
心理学では保有効果というんですが、自分が持っているものを失うことや、環境が変わってしまうことを避けるために、自分が所有するものに高い価値を感じ『手放したくない』と感じる心理現象を指します。
今の状態を維持するため、自分が保有する物を手放す損失を避けることによって生じる人間の心理のことをいうわけなんですね。
トラウマボンディングは感情的な絆によって作られてしまう心の繋がりを意味します。
これはカップルや夫婦などの恋愛関係だけではなく、家庭内や職場などで誰にでも起こりうる心理状態です。
例えば、パワハラをしてくる上司に『この人は厳しすぎるけど、自分を叱ってくれているんだ』とか、毒親に対して『酷いことをされたけど、育ててくれたから感謝しないと』という同情心や感情移入もトラウマボンディングなんですね。
ただこのブログで皆さんにお伝えしたいことは、トラウマボンディングを持つことがダメということではありません。
こういった愛着の問題が被害者が逃げられない原因になるということ、そしてそれは心理的反応であり決して珍しいことではないということです。
トラウマボンディングは、虐待の恐怖から逃れるため逆に相手に好意を抱いて、自分自身の心を平穏に保とうとする防衛反応のうちの一つなんですね。
虐待が起きている関係では、こういった心理状態は普通に起こることで、虐待を受けた方だけが経験し共感できるものであるとも言えますよね。
では、どうやってトラウマボンディングを断ち切ることができるのか、こちらの動画で『共依存を克服して自分の幸せを見つける方法』を解説しています。
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この記事を書いた人
中村りん
渡米後、悪性ナルシスト(Malignant Narcissist)によるモラルハラスメント体験をきっかけにアメリカのナルシシズムに関する知識を得て、2021年情報発信するためYouTubeを開始。日本でまだ知られていない自己愛性虐待や、ガスライティングへの認知度と理解を高めるために活動中。同じ境遇の方の自尊心の回復とエンパワーメントに向けて『目に見えない精神的虐待』や『有毒な人(Toxic person)』への対策を解説。
【YouTube】https://youtube.com/channel/UCfEUQrCx31yDdNPiKqkApMg